訓練の指導・監修について
本サービスが提供する吃音克服訓練内容は、新潟リハビリテーション大学 道関京子教授の指導・監修 のもとで、日本全体構造臨床言語理論(JIST法)をベースにした専門的な訓練方法の考え方や進め方をもとに作成されています。
本解説は、吃音症の方を訓練指導する立場にある方を対象に、本サービスの訓練の 訓練方法についてより深く理解していただくことを目的とした情報です。
※ さらに言語訓練方法や臨床言語理論について詳しく知りたい方は、下記の文献を参照ください。
本サービスが提供する吃音克服訓練内容は、新潟リハビリテーション大学 道関京子教授の指導・監修 のもとで、日本全体構造臨床言語理論(JIST法)をベースにした専門的な訓練方法の考え方や進め方をもとに作成されています。
本解説は、吃音症の方を訓練指導する立場にある方を対象に、本サービスの訓練の 訓練方法についてより深く理解していただくことを目的とした情報です。
※ さらに言語訓練方法や臨床言語理論について詳しく知りたい方は、下記の文献を参照ください。
訓練の進め方
吃音症の原因
吃音の原因はいったい何なのかは、限りなく繰り返された課題です。次々と仮説が提出されています。
吃音は、話しことばの流暢性の乱れが問題となりますが、流暢と非流暢の状態は不規則・不随意・間欠的に出現し、その理由も未だ明確になっていません(フレーザー,1994)。
多様な原因からの結果である諸原因が、もし分かったしても、成人吃音者の場合は、それを取り除くだけで解決できるというように簡単にはいきません。吃音の原因が病気とわかっても、治療ですぐ吃音が治ることはありません。
特に成人の場合、成人になるまでに習得してしまった発話の非流暢性は、その病気治療で変わるわけではありません。誤って習得してしまった、話す行動の発生パターンそのものに対する科学的なアプローチがなされなければ解決にならないのです。
吃音のとらえ方
吃音は、話しことばの流暢性の乱れが問題となりますが、流暢と非流暢の状態は不規則・不随意・間欠的に出現し、その理由も未だ明確になっていません(フレーザー,1994)。
多様な原因からの結果である諸原因が、もし分かったしても、成人吃音者の場合は、それを取り除くだけで解決できるというように簡単にはいきません。吃音の原因が病気とわかっても、治療ですぐ吃音が治ることはありません。
特に成人の場合、成人になるまでに習得してしまった発話の非流暢性は、その病気治療で変わるわけではありません。誤って習得してしまった、話す行動の発生パターンそのものに対する科学的なアプローチがなされなければ解決にならないのです。
吃音症状とは表面に表れた行動現象です。この表面観察から、重度・軽度とか、頻度が多い・少ないとか、随伴症状の有無とかの水平結果を得ます。
JIST法では、この表面観察以外にその人間の話す活動の内側に入って、流暢に話す階層のどこが不完成なのかを垂直的・階層的にとらえていきます。吃音症状・行動の中には、不完全な習得による無理な話し方のサインがあり、これを自覚し自然な方向へと導こうとしています。
訓練の進め方
JIST法では、この表面観察以外にその人間の話す活動の内側に入って、流暢に話す階層のどこが不完成なのかを垂直的・階層的にとらえていきます。吃音症状・行動の中には、不完全な習得による無理な話し方のサインがあり、これを自覚し自然な方向へと導こうとしています。
どのような吃音症状の人に対しても、その一人の全体精神が、「本当は、普通に話せる能力を獲得する筈だったのに、どこかの構造・段階がうまくいかなくて非流暢になったのか」を見つけ出すことが重要です。
そしてその段階に戻り、より習得し易い設定で訓練しまっすぐ流暢な方向へ話しことばを再構造化・再習得していく方法をとります。
つまり、人間のもっとも自然な言語獲得過程を、人間の精神活動成立の根本から探究していくようなやり方です。特に、成人の吃音者がこれまで何とか吃症状を和らげ回避しようとしてきた話しことばの工夫のほとんどが、自然に話す行動を曲げた不自然なくせになっていることが多いことに注意すべきです。
まず、その不自然な回避を取り除くことから始めます。JIST法では、あくまで人間の自然な習得(自然に話す能力の構造化)を目指すので、不自然なままでテクニックを駆使して軽減する方法はとりません。
さらに、吃音者の内的な習得の段階を感知しながら進めてゆくので、吃音克服訓練の場合はこの構造化の進み具合を言語聴覚士と吃音者がお互いに話し確認し合いながら進めるのが理想的な訓練です。
※ さらに詳しく知りたい方は、
「道関京子(2004) :吃音 事例7 全体構造法の吃音訓練 シリーズ言語臨床事例集9 学苑社」を参照ください。
そしてその段階に戻り、より習得し易い設定で訓練しまっすぐ流暢な方向へ話しことばを再構造化・再習得していく方法をとります。
つまり、人間のもっとも自然な言語獲得過程を、人間の精神活動成立の根本から探究していくようなやり方です。特に、成人の吃音者がこれまで何とか吃症状を和らげ回避しようとしてきた話しことばの工夫のほとんどが、自然に話す行動を曲げた不自然なくせになっていることが多いことに注意すべきです。
まず、その不自然な回避を取り除くことから始めます。JIST法では、あくまで人間の自然な習得(自然に話す能力の構造化)を目指すので、不自然なままでテクニックを駆使して軽減する方法はとりません。
さらに、吃音者の内的な習得の段階を感知しながら進めてゆくので、吃音克服訓練の場合はこの構造化の進み具合を言語聴覚士と吃音者がお互いに話し確認し合いながら進めるのが理想的な訓練です。
※ さらに詳しく知りたい方は、
「道関京子(2004) :吃音 事例7 全体構造法の吃音訓練 シリーズ言語臨床事例集9 学苑社」を参照ください。
【フルーエントトーク】における訓練の考え方
本サービスで提供する訓練内容は、以下の考え方を重視して作成さrています。
(1) 言語習得における知覚の役割を重視
聴覚、振動覚、視覚、振動触覚、運動・空間感覚、自己受容感覚など、人間の多種の知覚から得られる潜在的な分節構造を、能動的にたどりながら再分節化することを目的としています。
多数の感覚を通して覚えた機能は忘れにくいもので、このように多くの感覚経路を活用して、練習者が自らの力で機能することばを習得していけるように援助しています。
話しことばの抑揚、強さ、緊張の程度、休止、時間(速さ)、周波数、空間、身体や身振り、場面、情緒性等の様々な要素を、日本語話しことば全体の中で理解できるようにするために必要な条件を多数設定してあります。
(2) 話しことばのリズムやイントネーション面を重視
多数の感覚を通して覚えた機能は忘れにくいもので、このように多くの感覚経路を活用して、練習者が自らの力で機能することばを習得していけるように援助しています。
話しことばの抑揚、強さ、緊張の程度、休止、時間(速さ)、周波数、空間、身体や身振り、場面、情緒性等の様々な要素を、日本語話しことば全体の中で理解できるようにするために必要な条件を多数設定してあります。
ことばの学習を効果的に全体的にとらえてもらうため、国語の典型的な音、意味、規則を運搬する話しことばのリズムやイントネーション面の訓練を充実させています。
リズムやイントネーションの訓練は、理論で説明するよりも繰り返し体験することが重要です。ことばは人間の話す行為の中で、ことばとしての意味を持ち、現実となります。
また、リズムやイントネーションを知覚しやすいように、周波数調整器や振動子を併用できるようにしています。
(3) 発声伝達により表現するという欲求を優先
リズムやイントネーションの訓練は、理論で説明するよりも繰り返し体験することが重要です。ことばは人間の話す行為の中で、ことばとしての意味を持ち、現実となります。
また、リズムやイントネーションを知覚しやすいように、周波数調整器や振動子を併用できるようにしています。
表現の質的次元を理論性より情意性(精神作用の完備)から始めてあります。
バラバラに音や単語を並べただけでは、何かを言ったことにはなりません。ことばでの表現は、単純に文法規則に単語を埋め込んでさえいれば、出来上がるものでもありません。単語が集まってまとまって1つの表現をしたとき、初めて何かを言ったことになります。
段階的には、人間がことばを獲得することに対して、自然で連続したものとして次に示すように次第に完備した文に進む過程(渡辺先生の国語構文論)を一貫してたどっています。
(4) 非人間的な、刺激による反応理解の訓練を排除
バラバラに音や単語を並べただけでは、何かを言ったことにはなりません。ことばでの表現は、単純に文法規則に単語を埋め込んでさえいれば、出来上がるものでもありません。単語が集まってまとまって1つの表現をしたとき、初めて何かを言ったことになります。
段階的には、人間がことばを獲得することに対して、自然で連続したものとして次に示すように次第に完備した文に進む過程(渡辺先生の国語構文論)を一貫してたどっています。
- 未分化な本能的叫び
- 話し手と相手とのつながりの把握
- 話し手の主体性の確立
- 対象の判定
人間は、ことばの理解が全部完了してから話しはじめるのではなく、まだことばの本当の意味や全体の広がりに気づかないうちから、ことばの世界に入っていくものです。だから、ことばを「話す」や「理解する」とは、個々に分離された出来事ではなく、同時に体験しながら進行させていく過程なのです。
つまり、ことばの中にいてことばを話すことが、理解しようとする志向的な態度を生み出すのです。
理解しようとする明確な試みは、話す前におこなわれるのではなく、話しながらおこなわれる現象学理論を基盤にしています。
つまり、ことばの中にいてことばを話すことが、理解しようとする志向的な態度を生み出すのです。
理解しようとする明確な試みは、話す前におこなわれるのではなく、話しながらおこなわれる現象学理論を基盤にしています。
【フルーエントトーク】の訓練を行う上でのポイント
◆ 基礎訓練のポイント
◆ 吃音訓練のポイント
1) 「小節リズムとなえうた」を使った訓練
2) 「小節リズムとなえうた」の訓練速度について
3) 毎日継続のリズムとなえうた訓練
◆ 基礎訓練のポイント
この訓練では、まず発話する自分を知ることが重要です。
吃るときの動きやしぐさとか、ブロックの分析とか、発声器官の動きとかを認知するとういことではありません。あくまで自然な発話の感覚知るということです。
まず素直に声を出す練習をします。自分が自然な声を出しているかを自覚しながら訓練します。健常者の母音発声音と訓練者の母音発声音を聞き比べて声の厚みの違いを意識します。声のボリュームメーター等で声のボリュームを比較すると、健常者にくらべ声のボリュームが薄いことがわかります。これは、無理に発声しようとして姿勢が斜め屈みだったりすることにより十分声帯を使っていない事に起因するものです。
自然な声を出すことに気づく訓練を行うことで、自然と姿勢も矯正されていきます。
このことに注意しながら、次の2つの基礎訓練を行います。
1) 母音・子音の訓練(身体リズム運動)
2) 「4行となえうた」の訓練 : 話しことば文(プロソディ)
3) 低周波刺激、不連続刺激、触覚刺激を使った訓練
吃るときの動きやしぐさとか、ブロックの分析とか、発声器官の動きとかを認知するとういことではありません。あくまで自然な発話の感覚知るということです。
まず素直に声を出す練習をします。自分が自然な声を出しているかを自覚しながら訓練します。健常者の母音発声音と訓練者の母音発声音を聞き比べて声の厚みの違いを意識します。声のボリュームメーター等で声のボリュームを比較すると、健常者にくらべ声のボリュームが薄いことがわかります。これは、無理に発声しようとして姿勢が斜め屈みだったりすることにより十分声帯を使っていない事に起因するものです。
自然な声を出すことに気づく訓練を行うことで、自然と姿勢も矯正されていきます。
このことに注意しながら、次の2つの基礎訓練を行います。
1) 母音・子音の訓練(身体リズム運動)
まず、地声で5母音が出るまで母音発声訓練を行います。母音が響いた発声ができるように意識します。母音が響いて発声できると発声する姿勢が良くなり姿勢屈みも無くなっていきます。引き続いて、子音訓練行います。
この時、身体リズム運動と組み合わせて実施すると、より効果的な訓練になります。
※ 訓練をさらに効果的に行うには、周波数調整器ユニット(オプション機器)を使い、マイク付ヘッドセットから自分の声のフィードバックを聞きながら響く有声音の地声を出す訓練が効果的です。
この時、身体リズム運動と組み合わせて実施すると、より効果的な訓練になります。
「身体リズム運動」とは
身体リズム運動とは、例えば、下図に示すような日本語の要素特徴にあった身体運動のことで、ことばの音の特徴を身体全体で体験しながら自分の発話を自覚できるようにするものです。
これにより、自然に発話を誘導させながら訓練を行うことが可能になります。
身体リズム運動は、話す自分を知る自己受容感覚上でも有効な手段であり、自然な声を出して行く感覚を習得できます。
人間の言語習得は、最初に脳と身体が役割を果たします(ヴィコツキー、1997:市川1991)。その音やプロソディの要素特徴を身体全体で体験しながら、自分の発話を自覚していくのです。
ことばの持つ特徴を含んだ身体運動を行いながら、各母音・子音を発声することで、自分の身体で各音声の特徴や声の出し方を自己受容してゆくきます。
・ 長 さ :運動時間
・ 高 さ :自己(受容)覚を中心とする高低
・ 形 :運動イメージ(口形ではない)
・ 緊張度 :緊張と弛緩の程度
・ 開閉度 :身体の開きぐあい
身体リズム運動の詳細や組合せ方は、経験のある専門的なノウハウが必要であるため、言語聴覚士に相談して実施してください。
下例のように、言語音の音声的特徴と身体の動きの要素を関連付けることで、単音、及びリズム、イントネーションといったプロソディ要素が正しく知覚できるになります。
これにより、自然に発話を誘導させながら訓練を行うことが可能になります。
身体リズム運動は、話す自分を知る自己受容感覚上でも有効な手段であり、自然な声を出して行く感覚を習得できます。
人間の言語習得は、最初に脳と身体が役割を果たします(ヴィコツキー、1997:市川1991)。その音やプロソディの要素特徴を身体全体で体験しながら、自分の発話を自覚していくのです。
ことばの持つ特徴を含んだ身体運動を行いながら、各母音・子音を発声することで、自分の身体で各音声の特徴や声の出し方を自己受容してゆくきます。
長さ | 高さ | 形 | 緊張度 | 開閉度 | |
---|---|---|---|---|---|
「あ」 | ゆっくり | 中位に | 大きく広い | ゆったり | 開く |
「い」 | 長過ぎず | やや下方に | 丸い | 一部緊張 | 囲む |
「う」 | はやく | 低く | 輪郭ある | 圧迫 | 閉じる |
「え」 | 伸ばさず | 高めに | 折れた直線 | やや緊張 | 閉じきらない |
「お」 | 素早く | 高く | 鋭い直線 | 緊張 | 閉じきった |
・ 高 さ :自己(受容)覚を中心とする高低
・ 形 :運動イメージ(口形ではない)
・ 緊張度 :緊張と弛緩の程度
・ 開閉度 :身体の開きぐあい
身体リズム運動の詳細や組合せ方は、経験のある専門的なノウハウが必要であるため、言語聴覚士に相談して実施してください。
下例のように、言語音の音声的特徴と身体の動きの要素を関連付けることで、単音、及びリズム、イントネーションといったプロソディ要素が正しく知覚できるになります。
例1) 母音「あ」「お」の身体リズム運動を使った訓練
身体リズム運動の母音訓練
例2) 子音「か」「さ」の身体リズム運動を使った訓練
身体リズム運動の子音訓練
身体リズム運動の母音訓練
身体リズム運動の子音訓練
※ 訓練をさらに効果的に行うには、周波数調整器ユニット(オプション機器)を使い、マイク付ヘッドセットから自分の声のフィードバックを聞きながら響く有声音の地声を出す訓練が効果的です。
2) 「4行となえうた」の訓練 : 話しことば文(プロソディ)
話しことばの土台から聴く基礎訓練として、「4行となえうた」を使います。
「4行となえうた」は、
1行目:あつあつ スープ
2行目:あつあつ スープ
3行目:ふーふー ふーふー
4行目:あつあつ スープ
の4行文から構成され、3行目に異なるフレーズをいれることで、いったん不連続な流れをつくり、4行目の発話を試します。
4行目がテキスト通りに初頭音が出て、且つ、リズムとプロソディに従って唱えられるように訓練します。
もしテキスト通りに上手くリズム通りプロソディに載って唱えられない時や初頭音がずれたりする時は、次項の「3) 低周波刺激、不連続刺激、触覚刺激を使った訓練」を行うと効果があがります。
音素が能動的に知覚できていない、またプロソディの自己受容感覚が不確実と思われる場合は、もう一度身体リズム運動を使った母音・子音訓練へ戻って訓練を行ってください。
本訓練では、下図のように音声可視化記号によって、話しことばが持つプロソディを、視覚的にも表現しています。
音声可視化による訓練
「4行となえうた」は、
1行目:あつあつ スープ
2行目:あつあつ スープ
3行目:ふーふー ふーふー
4行目:あつあつ スープ
の4行文から構成され、3行目に異なるフレーズをいれることで、いったん不連続な流れをつくり、4行目の発話を試します。
4行目がテキスト通りに初頭音が出て、且つ、リズムとプロソディに従って唱えられるように訓練します。
もしテキスト通りに上手くリズム通りプロソディに載って唱えられない時や初頭音がずれたりする時は、次項の「3) 低周波刺激、不連続刺激、触覚刺激を使った訓練」を行うと効果があがります。
音素が能動的に知覚できていない、またプロソディの自己受容感覚が不確実と思われる場合は、もう一度身体リズム運動を使った母音・子音訓練へ戻って訓練を行ってください。
本訓練では、下図のように音声可視化記号によって、話しことばが持つプロソディを、視覚的にも表現しています。
音声可視化による訓練
3) 低周波刺激、不連続刺激、触覚刺激を使った訓練
本JIST法訓練では、教えるのではなく能動的に知覚して高次な階層を自ら習得してもらうことを狙っています。
この手段の一つとして、刺激は過重に与えるより不連続な方が知覚しやすいという研究の結果をもとに(ロベルジュ、1988)、音声周波数帯域を不連続にして聞き取る訓練があります。これにより、プロソディと音韻を同時に知覚・構造化することが自然に身につきます。
主に用いる不連続周波数帯域は 300~3000Hz間で、ここをフィルターで減衰(カット)します。会話周波数帯域の大部分を遮断することで、プロソディ部分が含まれる 300Hz以下の低周波帯域に訓練者の意識が行くようにします。
健常者は、この不連続周波数帯域での話しことばを聞いても、3~8句聞けば音素も正確に聞き取ることができます。つまり能動的に知覚しているのです。
しかし、吃音者は、最初から最後まで物理的に聞こえるプロソディしか聞き取れず、能動的に音素は聞き取ることが困難ケースが多くあります。
この段階の未構造化も話しことばの流暢性の乱れに関係していることがわかってきており、低周波刺激、不連続刺激訓練、触覚刺激訓練により、音素が聞き取れる訓練を行うことは効果的です。
訓練の段階としては、不連続周波数帯域(不連続刺激訓練)でプロソディにのった音素の聞き取り・構造化できるように訓練を行います。プロソディを表す身体リズム運動を使ってプロソディを無意識化つまり自己統合化します。そしてプロソディの無意識化後にプロソディの中の音素を聞き取れるように訓練を行っていきます。
不連続周波数帯域でリズムに合わせて音素が聞き取れて、テキスト通りに唱えられれば、吃音の重症度は著しく軽減され、また全身に及んでいた随伴症状も軽減されていきます。
※ 本訓練を、オプション機器(周波数調整器)を用いて行う場合の詳細については、オプション機器を使った高度な訓練 を参照ください。
この手段の一つとして、刺激は過重に与えるより不連続な方が知覚しやすいという研究の結果をもとに(ロベルジュ、1988)、音声周波数帯域を不連続にして聞き取る訓練があります。これにより、プロソディと音韻を同時に知覚・構造化することが自然に身につきます。
主に用いる不連続周波数帯域は 300~3000Hz間で、ここをフィルターで減衰(カット)します。会話周波数帯域の大部分を遮断することで、プロソディ部分が含まれる 300Hz以下の低周波帯域に訓練者の意識が行くようにします。
健常者は、この不連続周波数帯域での話しことばを聞いても、3~8句聞けば音素も正確に聞き取ることができます。つまり能動的に知覚しているのです。
しかし、吃音者は、最初から最後まで物理的に聞こえるプロソディしか聞き取れず、能動的に音素は聞き取ることが困難ケースが多くあります。
この段階の未構造化も話しことばの流暢性の乱れに関係していることがわかってきており、低周波刺激、不連続刺激訓練、触覚刺激訓練により、音素が聞き取れる訓練を行うことは効果的です。
訓練の段階としては、不連続周波数帯域(不連続刺激訓練)でプロソディにのった音素の聞き取り・構造化できるように訓練を行います。プロソディを表す身体リズム運動を使ってプロソディを無意識化つまり自己統合化します。そしてプロソディの無意識化後にプロソディの中の音素を聞き取れるように訓練を行っていきます。
不連続周波数帯域でリズムに合わせて音素が聞き取れて、テキスト通りに唱えられれば、吃音の重症度は著しく軽減され、また全身に及んでいた随伴症状も軽減されていきます。
※ 本訓練を、オプション機器(周波数調整器)を用いて行う場合の詳細については、オプション機器を使った高度な訓練 を参照ください。
◆ 吃音訓練のポイント
1) 「小節リズムとなえうた」を使った訓練
吃音訓練には主に 「小節リズムとなえうた」 を用います。
これは吃音者が歌うときには吃らない理由に基ずいています。吃音者の発話運動の不随意性は、錐体外路性の運動過多構音障害に類似しているからでです。Larry(1999)も脳幹基底部の血流や神経伝達物質の関与を想定しています。
本訓練の「小節リズムとなえうた」は、錐体外路性構音障害の不随意リズムをコントロールするために用いる「となえうた」を応用したものです。したがって、随伴症状が軽減してから、「リズムとなえうた訓練」を行うのがよいでしょう。
「小節リズムとなえうた」とは、従来からの1音節ごとに打っていくリズム効果の利用とは、まったく異なったものです。 歌がそうであるように、発話時に「小節リズム」をととのえ、発話の休止や間を体験 していくものです。
導入時の小節リズムが初頭音開始に有効ですが、やってゆく中で結局、吃音者が話ことばの流暢性を乱すのは、発話の最後の休止が十分でないためと考えられます。要するに発話文の最後で1小節分待てないのです。話しことばを言い終わったか終わらないうちに、意識は次の話しことばの初頭音にいってしまいます。この結果、十分言い終わりの休止が取れず、発話リズムを乱す吃音者が多いのが現状です。
本訓練で用いる「小節リズムとなえうた」は、言い終わり部分を特に強調して練習 します。
下例のとなえうたの場合だと、「あきかぜ」と「ね」が同じ小節間隔であることを実体験して自覚できるようにします。「ね」は「ね・・・」であり、慌てて次の言い出しに進まないよう発話スピードの自己調整ができるように練習します。
そして、この自己受容されていない発話小節リズムを知覚しやすいように、唱えると時には小節の区切りをつける「身体リズム運動」を取り入れる工夫もよいでしょう。何を練習しているか自覚しやすくするために「身体リズム運動」を用いる事は訓練効果が増します。
本訓練で用いられる 「小節リズムとなえうた」訓練は正しく言えることが目的ではなく、随意な発話運動の自然なリズムを練習することが目的 になります。
これは吃音者が歌うときには吃らない理由に基ずいています。吃音者の発話運動の不随意性は、錐体外路性の運動過多構音障害に類似しているからでです。Larry(1999)も脳幹基底部の血流や神経伝達物質の関与を想定しています。
本訓練の「小節リズムとなえうた」は、錐体外路性構音障害の不随意リズムをコントロールするために用いる「となえうた」を応用したものです。したがって、随伴症状が軽減してから、「リズムとなえうた訓練」を行うのがよいでしょう。
「小節リズムとなえうた」とは、従来からの1音節ごとに打っていくリズム効果の利用とは、まったく異なったものです。 歌がそうであるように、発話時に「小節リズム」をととのえ、発話の休止や間を体験 していくものです。
導入時の小節リズムが初頭音開始に有効ですが、やってゆく中で結局、吃音者が話ことばの流暢性を乱すのは、発話の最後の休止が十分でないためと考えられます。要するに発話文の最後で1小節分待てないのです。話しことばを言い終わったか終わらないうちに、意識は次の話しことばの初頭音にいってしまいます。この結果、十分言い終わりの休止が取れず、発話リズムを乱す吃音者が多いのが現状です。
本訓練で用いる「小節リズムとなえうた」は、言い終わり部分を特に強調して練習 します。
下例のとなえうたの場合だと、「あきかぜ」と「ね」が同じ小節間隔であることを実体験して自覚できるようにします。「ね」は「ね・・・」であり、慌てて次の言い出しに進まないよう発話スピードの自己調整ができるように練習します。
そして、この自己受容されていない発話小節リズムを知覚しやすいように、唱えると時には小節の区切りをつける「身体リズム運動」を取り入れる工夫もよいでしょう。何を練習しているか自覚しやすくするために「身体リズム運動」を用いる事は訓練効果が増します。
本訓練で用いられる 「小節リズムとなえうた」訓練は正しく言えることが目的ではなく、随意な発話運動の自然なリズムを練習することが目的 になります。
(1) 小児用「リズムとなえうた」訓練
小児用本訓練は「遊び」や「ことば遊び」の知覚体験しながらリズミカルな話しことば訓練を行います。
いかに唱えてもらうかが重要で、復唱(おうむ返し)ができても唱えたことになりません。一回復唱ができて求める階層の問題が自覚できる子は吃音になりません。小児は成人のように指示とおりに何回も繰り返してくれるような工夫が必要です。
100種類のリズムとなえうた訓練から小児が好むリズムとなえうたや、好む絵の訓練から初めて、各種のリズムとなえうた訓練を唱えさせる訓練を行います。 それまでの不完全な基礎部分の習得ができれば、後は正しく発達してくれるようになります。
(2) 成人用「リズムとなえうた」訓練
いかに唱えてもらうかが重要で、復唱(おうむ返し)ができても唱えたことになりません。一回復唱ができて求める階層の問題が自覚できる子は吃音になりません。小児は成人のように指示とおりに何回も繰り返してくれるような工夫が必要です。
100種類のリズムとなえうた訓練から小児が好むリズムとなえうたや、好む絵の訓練から初めて、各種のリズムとなえうた訓練を唱えさせる訓練を行います。 それまでの不完全な基礎部分の習得ができれば、後は正しく発達してくれるようになります。
本訓練採用のJIST法は、一般的に最適な訓練で内的言語の構造化を起こさせるのが重要であり、構構造化が起きた後は特別な訓練をやらなくても、人間はその段階の知覚で言語生活が送ることができます。
失語症などの訓練では一度言語構造化された言語構造化は維持されることがわかっています。ただし、成人吃音者の場合は失語症など後天的な言語障害と違うと考えられます。
成人の場合はどの言語構造化段階も、細心の注意と最後の言語構造化段階までしっかり訓練していかないと安定した結果が出ません。吃音は話す運動過程の中の問題ですから、静止時や他の運動中に身体の緊張が取れても役に立ちません。話す運動の中で習得していく必要があるのです。
しかし大人になってしまった身体と精神を習得段階に戻し、やり直すことは物理・生理的も不可能です。そのため、その言語構造化段階で必要な体験要素探究や緻密な要素導入、及びある程度の再習得安定期間を考慮した訓練が必要です。非吃音者と同等な言語構造化ができるまで、訓練の継続、反復訓練が重要です。
成人用「リズムとなえうた」訓練で正しいリズムが知覚されても、これまで20~30年続けてきた特殊な話すリズムの癖は、理屈で分かっても切り替え難いものです。したがって、日々の継続した練習が必要になります。
1日の訓練時間はこれまでの訓練実績から訓練により唾液が十分でるまで(通常、10~30分)の訓練がよいでしょう。
(3) 「百人一首」訓練
失語症などの訓練では一度言語構造化された言語構造化は維持されることがわかっています。ただし、成人吃音者の場合は失語症など後天的な言語障害と違うと考えられます。
成人の場合はどの言語構造化段階も、細心の注意と最後の言語構造化段階までしっかり訓練していかないと安定した結果が出ません。吃音は話す運動過程の中の問題ですから、静止時や他の運動中に身体の緊張が取れても役に立ちません。話す運動の中で習得していく必要があるのです。
しかし大人になってしまった身体と精神を習得段階に戻し、やり直すことは物理・生理的も不可能です。そのため、その言語構造化段階で必要な体験要素探究や緻密な要素導入、及びある程度の再習得安定期間を考慮した訓練が必要です。非吃音者と同等な言語構造化ができるまで、訓練の継続、反復訓練が重要です。
成人用「リズムとなえうた」訓練で正しいリズムが知覚されても、これまで20~30年続けてきた特殊な話すリズムの癖は、理屈で分かっても切り替え難いものです。したがって、日々の継続した練習が必要になります。
1日の訓練時間はこれまでの訓練実績から訓練により唾液が十分でるまで(通常、10~30分)の訓練がよいでしょう。
「百人一首」訓練には、百人一首が詠まれた場所、背景の写真を載せてあります。
成人用「リズムとなえうた」訓練に飽きた時に、またより高度な「リズムとなえうた」訓練として利用してください。
本来の百人一首の5-7-5-7-7の詠み方と違いますが、訓練テキストのリズムに合わせてとなえうた訓練をしてください。
成人用「リズムとなえうた」訓練に飽きた時に、またより高度な「リズムとなえうた」訓練として利用してください。
本来の百人一首の5-7-5-7-7の詠み方と違いますが、訓練テキストのリズムに合わせてとなえうた訓練をしてください。
2) 「小節リズムとなえうた」の訓練速度について
訓練速度は「遅い」、「ふつう」、「速い」の順番で行います。
訓練日毎にその日の身体コンデションに合わせて訓練速度を選択して訓練するのが良いでしょう。無理して「速い」訓練をせず、「遅い」訓練速度をクリヤーしながら順番に速度を上げて訓練を行います。
リズムを知覚できたかどうか、訓練効果が上がったどうかは、訓練と同じリズム速度で自由会話を試みるのも良いでしょう。
訓練速度は、下図のように設定されています。
「ふつう」は、標準的な心拍数をもとにしています。それぞれの速度の違いは、耳で聞いた感じではわずかですが、このわずかな差が発話のタイミングをとる上で重要な要素になります。
となえうたの訓練速度
訓練日毎にその日の身体コンデションに合わせて訓練速度を選択して訓練するのが良いでしょう。無理して「速い」訓練をせず、「遅い」訓練速度をクリヤーしながら順番に速度を上げて訓練を行います。
リズムを知覚できたかどうか、訓練効果が上がったどうかは、訓練と同じリズム速度で自由会話を試みるのも良いでしょう。
訓練速度は、下図のように設定されています。
「ふつう」は、標準的な心拍数をもとにしています。それぞれの速度の違いは、耳で聞いた感じではわずかですが、このわずかな差が発話のタイミングをとる上で重要な要素になります。
となえうたの訓練速度
3) 毎日継続のリズムとなえうた訓練
逆戻りしないように生活の日課のつもりで、毎日15分程度「リズムとなえうた訓練」を継続することが大切です。「百人一首リズムとなえうた訓練」を織り交ぜて楽しみながら訓練継続をしてください。
参考文献
- 道関京子(2004) :吃音 事例7 全体構造法の吃音訓練 シリーズ言語臨床事例集9 学苑社
- Ayres,A.J.(1979) :Sensory Intergration and the Child.Los Angeles,Western Psychological Services
- 米本恭三監修 道関京子編 新版 失語症のリハビリテーション 全体構造法 基本編 医歯薬出版 2016
- 米本恭三監修 道関京子編 新版 失語症のリハビリテーション 全体構造法 応用編 医歯薬出版 2016
- 道関京子(1995) :花鼓(はなつづみ)使用手引書.アニモ.
- 道関京子編 全体構造法でとり組む 失語症の在宅リハビリ 医歯薬出版 2007
- 米本恭三監修 道関京子編 失語症のリハビリテーション-全体構造法のすべて 第2版 医歯薬出版 1997
- 道関 京子・盛由紀子・宮野佐年・米本恭三(1998) :成人吃音の聴知覚における問題点と全体構造訓練.第24回日本聴能言語学会学術講演会予稿集.71
- フレーザー,M.(1994) :ことばの自己療法.神山五郎監訳 中島祥吉訳.ゼネラル印刷
- Guberina,P.(1970) :Phonetic Rhythms in the Verbo-tonal System,Revue de Phonetique appliquee.n.16:3-13.
- 市川浩(1991) :精神としての身体.勁草書房.178-224
- Jackson,J.H (1932) : Remarks on evolution and dissolusion of the nervous system. Taylor (Ed.), Selected Writings of John Huhlings Jackson. 2,Hodder & Staughton,London. 45-75
- Larry,M.(1999) : The Basal Ganglia’s Possible Role in Stuttering. International Stuttering, Awareness Day Online Conference,Invited Papers.
- メルロー=ポンティ,(1967) : 知覚の現象学1.竹内芳郎・小木貞孝訳.みすず書房
- ロベルジュ、C.監修(1994) : ヴェルボトナル法入門 .第三書房
- ロベルジュ、C.監修(1988) : 不連続についての考察 .言語聴覚研究シリーズ12.上智大学
- ルリヤ,A.R.(1978) : 神経心理学の基礎.保崎秀夫監修 鹿島晴雄訳.医学書院
- 佐久間鼎(1943) : ゲシュタルト心理学の立場. 内田老鶴圃.89-1225
- 谷川俊太郎(1981) : ことばのあそびうた.福音館書店.
- ヴィコツキー,L.S.(1977) : 精神発達の理論.柴田義松訳.明治図書.
- ヤーコブソン,R.(1981) : 一般言語学.川本茂雄監修 田村すず子他訳.みすず書房